オブラ・ディン号の考察メモ(仮)

Return of the Obra Dinnの考察風なメモ記事

「Return of the Obra Dinn」クリア後のあなたへ!オススメ考察サイト紹介

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※本記事はゲーム「Return of the Obra Dinn」のネタバレ内容が多分に含まれます。

まだクリアされてない方、物語の核心に触れたくない方は閲覧に十分ご注意下さい。

 

 

 

\オホーイ!/

 

皆さま、オブラ・ディン号からは無事に下船されましたか?

最近ジワジワと日本国内で話題になりつつある「Return of the Obra Dinn(通称:オブラディン号の帰還*1)」! 実は本作が2018年10月に発表された作品だとご存じない方もいらっしゃるかもしれません。まさかリリース2年半後にサントラが発表されるとは思わなかったよ……。*2

(※追記)2021年11月現在、サントラは各配信サイトでサブスク視聴できますが、購入するならSteamが一番低価格になっていてオススメです。

さらに今年の夏には、本作に登場する『手記』がグッズとして販売されましたがなんと通販初日に完売……!一応(?)再販予定とのことで、気になった方、リアル主任調査官気分を味わいたい方*3はチェックしてみて下さい。

Return of the Obra Dinn: The Book

 

 

さて、前置きが長くなってしまいましたが、これをお読みになってる下船……もといクリアされた皆様(あるいはプレイ動画等を視聴して結末をご覧になった方)の中には、あまりにそっけないエンディングに「え?で、結局この話なんだったの?」と面食らった人もいらっしゃるんじゃないでしょうか?事実、自分はそうでした……クレジットを見届けて早々に頭が「??????」状態になり、衝動的に一晩中数々の考察記事を徘徊しまくったものです。これも全部ヘンリー・エバンズのせいなんですよ……。

そう、この広大なインターネットの大海には、数多くの先人の皆様が書かれた本作の謎や魅力に関する感想・考察がたくさん残っているわけです!しかし色々なサイトがあって、どこから手を付けていいかわからない!まず何が何だかよくわかんないまま放り出されたストーリーを整理したい!!

そこで!本記事では自身が大変お世話になった、1周しただけではなかなか把握しきれない物語の全容や謎についての理解を深めるとっかかりとなるオススメサイト様をいくつかご紹介させていただきます!「あなたの物語」を探る一助になれば幸いです。

そして始めよう!60人の船員モエ・ライフ!

 

 

「オブラディン号の帰還」に見る猿の手(感想・考察)

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ssayu.hatenablog.com

こんな人にオススメ!とりあえずざっと内容の概要を把握したい!

オブラ・ディン号の船員たちを振り返りながら、彼らがどのような人物で、何を考えて行動していたのか?について考察されています。人物ごとに物語の出来事を振り返られて「この人がアレやってた人ね〜」と思い出しながら読みやすいです!60名の船員たちについて、クリア後に内容を整理しつつ理解を深めたい方にまず読んでみてほしい記事です。

なかでも冒頭の船長ロバート・ウィッテレルの項目は、当時の価値観や船長という責任に苛まされた彼の人物像が掘り下げられており、物語の解釈を深められます。登場人物の中でもとりわけ船長は捉え方に幅があるキャラクターだと思われますが、彼について踏み込んで考えるのも本作の醍醐味だと思います。また三等航海士マーティン・ペロットの項目では、記事タイトルにもある本作屈指のキーアイテムである"猿の手"が意味するものについて触れられています。

個人的には二等航海士付き司厨手サミュエル・ギャリガンの項目を読んで、この人物に対する印象が180度変わりましたし、彼だけではなく60名のキャラクターの仕草の作り込みや彼らの背景への興味をグッとかき立てられるようになりました。はぁ〜好きだ……船員たちが……。

 

「ストーリーの解説と考察」/攻略ヒントと特定理由@ウィキ

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w.atwiki.jp

こんな人にオススメ!時系列順に物語の謎や出来事を理解したい!

Ⅰ章からⅩ章までの内容を時系列に沿って振り返りたいときに目を通してほしいのがこちらの有志ウィキです。ただ時系列順に内容を整理するだけではなく、管理人さんによる船員たちの行動の疑問点や小ネタなどの考察が読み応え抜群!初回プレイ時には推理(もといオジサン数独パズル)に必死でなかなか全容を捉えきれなかった身としても大変お世話になりました。

本編を終えたあとも残される大きな謎の一つに、フィリップ・ダールという人物が挙げられると思います。なぜ彼が5章であのような奇怪な行動に走ったのか、その背後にある彼の思惑や船内の立場、査定書の「職務不履行」の記述に関する言及は必見です。また貝殻の謎や行方について本編の出来事を踏まえて丁寧に考察されており、特に複雑な取引の章の理解が深まること間違いなしです。

以降の脱出や終幕の章の記述を読んでいくと、物語終盤の出来事はほぼ無意味な争いだったと突きつけられます。その上で、ページ最後にまとめられた「どうして惨劇は起こったのか?」という項目では、みんな大好き二等航海士の暴挙に始まり、人魚の危険性を見誤った船長たちの判断ミス、そして最終的に船員同士の疑心暗鬼に陥ってしまったオブラ・ディン号を巡る不幸の数々について頭を抱えたくなるという……こうした余韻も本作の魅力の一つだと改めて痛感させられました。ほんと絶妙な後味なんですよね……。

 

【オブラディン号の帰還考察】たのしい保険査定員のおしごと(シリーズ)

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kusatabeso.livedoor.blog

こんな人にオススメ!19世紀英国事情に触れた物語の解説を読んでみたい!

物語の理解を深める上で欠かせない1800年代初頭のイングランドを取り巻く世界観について、非常にわかりやすく、かつドラマチックに触れられている考察記事シリーズです。正直こちらの記事を紹介したくてコレを書いたみたいなところ、あります……。ニコニコ動画youtubeに投稿されてるプレイ動画と連動していますが、一通り内容を把握していればウンウンと頷きながら記事を読み進められます!(動画もとっても面白いので併せてオススメです!)

さて、何と言ってもこちらの記事でオススメしたいのは当時のオブラ・ディン号や船員たちを取り巻く状況に関する解説です。大英帝国の繁栄を担ったイギリス東インド会社(HEIC)は、実はこの物語の時点で既に全盛期の勢いを失っており、オブラ・ディン号のような帆船も19世紀半ばに登場する蒸気船の台頭で歴史の表舞台を去っていきます。よく言えば古き良き、悪く言えば時代遅れになりつつある「旧体制イングランドそのもの」としてのオブラ・ディン号……という解釈は、本作の持つノスタルジーに奥行きをもたらします。

さらに興味深いのは、人魚の正体に切り込んだ考察こちらのパート)では、どの考察サイト様でも紹介されてない見解や知識に非常〜に感銘を受けました……必見です!また、終盤の記事では「取引」について、主人公である主任調査官と我々プレイヤー、そして『オブラ・ディン号の帰港』という手記を結びつける素晴らしい解釈が提示されており、こちらも必見です。

海の神話と古いイングランドはお互い時代から失われつつある……。

 

オブラ・ディン号 ネタバレ考察・分析(シリーズ)

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desaixjp.blog.fc2.com

こんな人にオススメ!ガッツリ当時の帆船知識や航海事情について知りたい!

ここまで紹介した考察サイトさんに目を通せば、おおよそ物語の内容については把握できるかと思います。……が、それじゃまだ足りない!もうちょっと実際の航海に関する知識に触れたい!と思った方に読んでいただきたいのが「祖国は危機にあり」様のブログ記事です。とにかく圧巻の情報量!特に1800年代初頭のイギリス東インド会社、および当時の航海知識に興味がある方は必読レベルの解説が盛り沢山!

日本語文献ではアクセスしにくい19世紀の英国商船事情について海外サイトや英語文献などの紹介を交えて解説されています。一つ一つの内容がボリュームたっぷり(「ネタバレ感想」を含めると計7記事!)なので、時間をかけてじっくり読まれるのがオススメです。

上記の「ネタバレ考察1〜4」の記事では、まず実際の帆船の乗組員の人数と比較しオブラ・ディン号は通常より少ない人数で運行していた、という前提を元に本編の数々のトラブルを整理されています。1人、また1人と船員が消えていった船で、残された者たちは何


を考えていたか?
終盤の「貝殻」を巡る対立を船内の勢力争いとして捉えることで、各人の複雑な思惑が入り交じる8章〜10章を考察されています。こちらの解釈を読んで、プレイヤーによって物語の読み取り方がここまで変わるものなのか!と大きな衝撃を受けました。

ちなみに考察記事とは別の「ネタバレ分析1〜2」では、とある3名の船員のバックボーンについてや、当時の東インド会社船(East Indiamen)の実際の役職との比較といった、船員たちの在りし日々に思いを馳せる理解を深める上で、大変参考になる解説や文献を紹介されているのでこちらも是非!(ゲームをプレイする上でリアル知識はほとんど必要ない*4とはいえ、多少なりとも背景知識に触れるとガラッと船の見え方が変わるんですよね。)

 

Return of the obra dinn考察③「エバンズ医師と猿の暗躍」

www.youtube.com

こんな人にオススメ!で結局ヘンリー・エバンズは何だったの?

Games Mikuraさんによる考察動画です。タイトルからわかるようにシリーズになってまして、初回は考察①「3つの貝殻の行方」、続きが考察②「船尾倉庫の鍵の謎」、そして最後が上記の考察③「エバンズ医師と猿の暗躍」です。

もちろん前2つの動画を見た上で最後の動画を見てほしいのですが、一本挙げるならこちらの動画!と決めておりました。なぜなら……ヘンリー・エバンズの暗躍なしに、"Return of the Obra Dinn(オブラ・ディン号の帰港)"は存在し得ないからです。

我々プレイヤーが彼から託された『手記』には、船内に残された死体の位置がメモされていることをご存知でしょうか。ちゃんと「一等航海士の部屋の外」や「左舷側通路」や「貨物甲板の樽」に死体があることを、最初からヘンリー・エバンズは我々に提示しているのです。

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ちなみに◯の形はページごとに全部違います(手書き感……?)

つまり彼は……9章で脱出する前から、船内にある全ての死体の位置を把握した上で、他の船員に死体を埋葬されないよう秘匿していた?とも考えられます。エバンズがオブラ・ディン号に乗っていたときからあの懐中時計を使いこなしていたなら……?そう仮定すると、我々が見届けた物語の隠された裏側に触れることができる、かも、しれま、せん……。こいつ絶対ヤバイ奴だよ!二等航海士とは別ベクトルで思考回路ヤバイんだよ!

 

オブラディン号船員メモ(※2021.11追記)

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https://w.atwiki.jp/obradinn_chara/w.atwiki.jp

こんな人にオススメ!60人の船員たちについて詳しく知りたい!!!!!!!

最後にご紹介するのは、船員たち60人の足取りを詳細にまとめられている有志ウィキです。実は当初本記事を書いたとき、物語の考察とキャラクター掘り下げは別の記事にしようと考え、第二弾として「船員編・オススメ記事紹介」を投稿する予定……だったのですが気付けば書かずに半年が経ってしまい(残念)、ひとまず第二弾を書くのは見送ることにしました。

その予定していた「船員編」の冒頭にドドン!と紹介しようと思っていたのがこちらのサイトです。ウィキ名を見れば分かる通り、船上の残留思念よろしくオブラ・ディン号から心が下船できない者たち(※オタク)にとっては聖地と呼ぶべき神サイト様です。何と言っても全船員のスクリーンショット満載な個別ページがあり、さらに今年に入ってからは全回想シーンの個別ページも追加されるなど、現在も管理人さんが随時編集されてらっしゃいます。もはやウィキ内の全ページが見所と言っても過言ではなく、気になったページからガシガシ読んでほしいです。このブログに辿り着いた方ならとっくにご存知かもしれませんね……!

その中で、あえて個人的なオススメページを挙げるなら……船員ならこの人(特にⅥ.海の兵たち その6)この人(特にⅤ.呪われた獲物 その2)、また回想シーンだとこの場面("注目点"に注目)が特に好きです。何度も見たと思ったシーンでも、そこにいる一人一人をじっくり観察することで思わぬ発見がある……ということを教えていただきました。船員たちが気になった方は、隅々までこちらのウィキと船内を60人の名前と顔と死因が一致するまで徘徊してみて下さい!

 

 

 

以上です!いかがでしたか?(様式美)

ここからは蛇足といいますか、ごくごく個人的な本作への感想なんですが……もしも「オブラ・ディン号の主人公といえば誰ですか?」と聞かれたら、自分は船長ロバート・ウィッテレル、三等航海士マーティン・ペロット、そして船医ヘンリー・エバンズを思い浮かべます。

最後の1人として生き残り、絶望の中で船と運命を共にした船長。人魚との「取引」を通じオブラ・ディン号という船の運命を決したマーティン*5。そして、彼らの人生を手記の形に記録し、全てを見届けたいと願ったエバンズ……。クレジットでこの3人が順に紹介されるように、オブラ・ディン号が本国イギリスへの「帰還」を果たすドラマを語る上で欠かせないのは、やはりこの3人だと感じます。(今回紹介しきれませんでしたが、この3名と「猿の手」が意味する内容とを照らし合わせた素敵な考察もたくさんあります!)

当然、オブラ・ディン号の乗組員60名全員が"Return of the Obra Dinn"という作品の主役と言えるでしょうし、実際そうだな〜とプレイする度に感じます。例えば助手の仇を取った船匠ウィンストン・スミス、例えばトゲに貫かれながら最後まで生き残ろうと足掻いた司厨手ズンギ・サーティ、例えば奇妙な貝殻を抱える使命を背負ったリム・ブンラン……彼ら一人一人を主人公として物語を辿っていけるだけの奥行きが本作にはたくさん詰め込まれています。

……そう、オブラ・ディン号を巡る「私たちの物語」はまだまだ無限に開かれているのです!1807年のファルマス港で、彼らはずっと皆さんを待っています。是非ともお気に入りの解釈や推し船員を見つけてもう一度乗船なさってみてください。

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ようこそ、記憶があるから楽しめるReturn of the Obra Dinnの世界へ……!

 

お願いだから60人の名前と顔と死因を忘れないで……………(激重感情)

 

 

 

 

 (2021.11追記)スクリーンショット画像追加・記事本文を少し修正しました。

*1:正式なゲーム内の日本語表記は「オブラ・ディン号の帰港」です、どこかで帰港→帰還と広まったらしい、確かに帰還の方がドラマ感ありますよね。

*2:一応これには理由があって、海外の受注生産限定パッケージ版の特典に併せてるようです。現物はもうすぐ発送されるんだとか……

*3:こちらも元は上記のパッケージ版の特典でした。もちろん船員たちの名前や死因は"空白"になっているので自由に書き込むことができます。真エンドに至る記述を残すも良し!トンチキな査定で埋めるも良し!

*4:英語圏では訛りも重要なヒントになるようですが、きちんとゲーム内の情報だけで推理できるって凄いことですよね……え?マバ?モロッコの場所?

*5:原語では、この8章のマーティンの台詞の中に"In return..."というフレーズがあり、タイトルとの密接な結びつきを想起させます。海外ウィキ参照(Bargain | Return of the Obra Dinn Wiki | Fandom)